自己観察のスキルとは?

 

何か自己観察というスキルについて説明する前に、指摘しておきたいことがある。メカニカル手法で着実な成果を生み出す力をいったん身につけたら、その着実な成果を裁量手法で生み出すことも比較的簡単で、無理なくその手法に移行できると思っても無理はない。

だが、そういう思い込みはしないでほしい。それは事実に反するからだ。すぐに分かるが、相場情報を評価して、「その場で」トレードの判断を下しながら着実な成果を生み出すのはけっして楽な仕事ではない。事前に分析をして判断を下すトレードから、「その場での」観察に基づいて相場を評価してトレードの判断を下すというトレードに移ると、着実な成果を生み出すときの根底にある心理が劇的に変わり、桁違いに難しくなる。

メカニカル手法では簡単に分かる具体的な変数を扱うので、着実な成果を生み出すためには明快で厳密な過程を踏めば良かった。事前に決めた一定数のトレードに対する勝率とリスク・リワード・レシオが良いエッジを見つけて、それを検証したときの意図どおりに正確に執行できる考え方を身につけたら、トレードではエッジの程度に応じた一貫性が得られるだろう。実に単純だ。

だが、裁量手法でのトレードはそれほど簡単ではない。というよりも、その正反対なのだ。分析についての認識がしっかりしていて、確率に基づく信念できちんと動くことができて初めて、裁量手法でのトレードを始めるとする。そうすれば、判断を誤って損をすることや、利食いを早まるか遅らせて取れたはずの利益を取り損ねることを恐れることなく、見えた機会を利用することができる。この場合、着実な成果を生み出せるかどうかは自分の「精神状態」にかかってくる。

つまり、「その場で」相場の動きを観察して、値動き方向やどこで仕掛けるか、リスク、ポジションサイズ、利益目標について分析をして決断を下すとき、意識に流れているエネルギーがどれくらいプラスかマイナスかといったことだ。

例えば、自信と不安は両極端な「精神状態」だ。自信に満ちた精神状態のときにはプラスのエネルギーで満たされていて、何らかの経験に踏み出すときに幸福感や自由を感じる。一方、不安な精神状態のときにはマイナスのエネルギーで満たされているので、何らかの経験に手を出そうとはしないか、していることをやめるか、そこから逃げ出すという特徴がある。

「その場」の判断でトレードをしているときには、自分の「精神状態」を観察する方法を学ぶ必要がある。客観的に観察して、自分にできる最高の選択や決定を楽にするために情報を処理するときには、どんな精神状態でも望ましいというわけではないからだ。どの相場情報を捨てて、どの相場情報を考慮するかについて最善の選択をすることや、その情報の評価、つまり、評価すると決めた情報の重要性を比較検討するために最も良い推論をすることや、最も良い決定を下すことはすべて、プラスの精神状態から生まれる。プラスの精神状態とは自信があり、幸せで、熱心で、穏やかで、柔軟で、自分を信用しているときだ。

一方、不安、怒り、動揺、失望、不満、腹立ち、悔しさ、裏切られた思い、後ろめたさ、落胆、落ち込み、絶望を感じているときには、どの情報を検討するかや情報をどうやって検討するかについて最も客観性を欠きやすい。そのため、評価に偏見が入り、結局は何をして何をしないかについて最も効果的でない決断を下してしまう。あなたのトレード仲間に数年間成功していたが、私生活で非常に難しい問題に直面しているために、精神的に傷つきやすいか突然怒り出す人がいるとしよう

あなたはトレードをこれまでどおり続けるように勧めるだろうか、それとも、問題が解決して気分が良くなるまでトレードをやめたほうがよいと言うだろうか。答えは明らかで、トレードを中断するほうを勧めるだろう。

なぜならば、彼は相場情報の客観的な評価や、何をして何をしないかについて最善の決定ができる精神状態にはないからだ。アドバイスをしても、とにかくトレードを続けるとその人が言い張るとき、かなり深刻な損失を被るのではないかと心配になるだろうか。この答えもイエスだろう。そうでなければ、そもそもトレードを中断したほうがよいとは勧めなかっただろう。大学のバスケットボール選手がフリースローを二回成功させたら、全国大会で優勝できるという例を出したことを思い出してほしい。

そこで、彼の意識にマイナスか過度にプラスの舞い上がった考えが浮かぶと、シュートを少なくとも一回は外すこともあり得ると説明した。身体的には、彼は二回とも完璧に成功できる状態だった。練習では、正確に同じシュートを二五回続けてよく成功させていたからだ。

だから、彼は身体的には試合で勝つ力があった。しかし、全国大会の決勝で、身体能力を発揮して二回ともシュートを成功させるかどうかは、身体的スキルだけで決まるわけではなかった。それに加えて、冷静で自信に満ち、プラス面に集中した精神状態にある必要もあった。彼が自信を持っていて、優勝がかかった瞬間にいることを楽しんでいると同時に、フリースローの準備段階でいつもする手順を踏むことだけに集中していれば、二回ともシュートを決めて試合に勝つだろう。

一方、緊張するかもしれないとか、シュートを失敗したらあとでいやな目に遭いそうだといったことを考え始めたら、否定的なことばかり考え出して、不安な「精神状態」に陥る。そうなると、勝つために必要な手順に集中するのではなく、シュートを外さないことや試合に負けないことに集中するだろう。結果として、身体能力がたとえ優れていても、彼は少なくとも一回はシュートを外すだろう。

また、実際にシュートをする前から優勝したかのように喜び始めても、シュートを少なくとも一回は外す可能性がある。彼はシュートを絶対に決められると思っているので、きっと英雄扱いされると考え始める。

そして、チームの連中やファンから褒めちぎられるところを想像しているため、浮かれ気分に陥ってしまう。浮かれ気分とは、失敗するリスクもあるということを認識できない精神状態を指す。この例では、興奮して高まったエネルギーが心身、特に手に伝わるために、指先からボールを離すときに狂いが生じて、起きるはずのないこと、つまりシュートを外すことが現実になる可能性がある。いずれにせよ、彼がシュートを外して試合に勝てないとすれば、それは身体能力のせいではない。

彼の「その場での精神状態」が影響して、身体能力を最大限に発揮できなくなるせいだ。言い換えると、勝つためには最高の「精神状態」でなければならない。身体的な活動に影響しかねないこうした心理的要素は、精神的な活動にも影響を及ぼす可能性がある。私たちはそれぞれが相場の動きの違いを特定するための分析技術をある程度は身につけている。

そして、それを、値動き方向を予測する際のエッジとするだけでなく、リスク評価や利食い目標の見極めにも使う。利益になりそうなトレード機会を特定する能力の最大限度は、相場の動きを特定できる数と質で決まると言える。バスケットボール選手が良い「精神状態」であれば、ボールが指先から離れる瞬間に百パーセントの身体能力を発揮して、試合に勝つだろう。

相場情報を評価してトレードの判断をしているときに、良い「精神状態」であれば、分析や意思決定の能力をそれがどういうものであれ、百パーセント発揮できるだろう。私は分析や意思決定の能力を百パーセント発揮すれば、トレードで確実に勝てると言いたいのではない。読者はすでに分かっているように、トレード結果はすべて確率的だからだ。

私が言いたいのは、客観的に情報を集める方法や、何をすべきかの結論に至るまでにどういう推論をするかと、「精神状態」には相関関係があるということだ。精神状態が良いほど、つまり自信にあふれているが、浮かれ気分にはならない状態であるほど、値動きの性質や特徴について蓄積してきた知識や洞察を十分に意識できる。

すると、否定的な感情に妨げられないので、推論をするときに十分に力を発揮しやすくなる。

そして、最終的には特定のトレード状況で最も良い決定や選択ができるようになる。

一方、「精神状態」からプラスのエネルギーが減るほど、学んだことを適切に当てはめて理解する能力も落ちる。冷静で、偏見がなく、柔軟である代わりに、マイナスの精神状態に陥ると、心を閉じて柔軟性を失う。いつもなら利用できる情報や洞察力が意識に上らなくなると、状況を客観的に評価する能力も落ちる。結局は、いつもならできる決定や選択がうまくできなくなる。

私たちはあとになって初めて、自分はもっとうまくできたと分かる。振り返って見ると、値動き方向や、損切りの逆指値を置く位置や利食いの位置について、理想的な選択をするために必要な分析は現在の自分の能力でも十分に可能だったと分かるからだ。

つまり、振り返ると、「その場で」はっきりと分かったはずのことが、一見すると不可解な理由で分からなかったということが、痛々しいほど明らかになるのだ。「その場で」は、何が最も良い選択や決定かがはっきりと分からなかった。それは私の言う心理的な「資産つぶし」が自分の「精神状態」に影響して、観察や評価、決定のスキルがいくらか落ちたからだ。

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